2008年11月28日
レポート/「純国産絹 京都三人衆 ~可能性への試み~」 3
[塩野屋絹だより]
会場では、毎日日替わりで各者のトークショーも行われ、毎日熱い時間となっていました!
18日/「養蚕の歴史と現状」服部芳和
消費者の方のご意見も活発な大討論会のような白熱ぶり!?
19日/「源氏物語『浮船』几帳製作を終えて」寺田豊
几帳製作についてのほか、貴重な昔の絞り柄見本裂を見せてくださいました。
20日/「日本刺繍 今と昔・・・そして私の刺繍」森康次
ひと作品ずつ丁寧に説明された森氏。
ちなみに右手の着物姿の方の黒地帯は、森氏作、この時説明中の着物と同モチーフ。
皆様との交流が図れたことは、今回の大変な収穫となりました。
本当にありがとうございました。
来年の京都での第2回展示会に向け、引き続きの製作をいたします。
そのまえに・・・
今回作品のほんの一部分をご紹介。
今回は素材・技の良さを見ていただこうと、色もはんなりと薄め、
すっきりと”引き算”を大切にした作品が多かったようです。
本物の素敵さは、写真ではとても表せませんが、ご参考までに。
森刺繍作品
寺田絞り作品
本シボ柳条縮緬
これらの作品は、塩野屋でお預かりいたしております。
今後は、少しずつ皆様にご覧いただける機会をつくってまいります。
ご覧になりたい方、塩野屋本店へご連絡下さい。
これらの作品をお分けすることも、またこれらをご参考の上、
オリジナルをおつくりさせていただくことも可能です。
みなさまと一緒に、日本の良い絹文化をつくって生きたいと思います。
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ご案内
「日本刺繍と京絞り・・・桜の競演」
2009年1月に森刺繍の生徒さんたちの作品展を寺田絞りさんのお店で開催予定だそうです。
詳細は、こちらをご覧下さい ⇒ 森刺繍
また、森刺繍さんの今年春の作品展の様子が、
現在発売の「きものサロン」誌08-09冬号にて紹介されています。
詳細は、こちらをご覧下さい ⇒ 森刺繍ブログ11/27
投稿者 orihanzo : 22:37
レポート/「純国産絹 京都三人衆 ~可能性への試み~」 2
[塩野屋絹だより]
会場は全ての作品が、純国産繭から国内の職人によってつくられた塩野屋の織物を使用。
一枚一枚に、どのような糸を使ったかが紹介されていました。
たとえば・・・
No.5 羽織「水模様」 森康次
経糸/碓氷製糸にて自動製糸、21中3本合わせ、駒撚り
緯糸/碓氷製糸にて自動製糸、21中5本合わせ、御召ヌキ(=強撚)
(経糸=縦糸、緯糸=横糸)
刺繍のアップ↓
No.32 訪問着「松皮菱横段」寺田豊
経糸/碓氷製糸にて自動製糸、21中3本合わせ、駒撚り
緯糸/碓氷製糸にて自動製糸、26中5本合わせ、御召ヌキ(=強撚)
絞りのアップ↓
No.70 帯「カツオボカシ7/3」服部芳和
経糸/碓氷製糸にて自動製糸、21中3本合わせ、諸撚り
緯糸/碓氷製糸にて自動製糸、21中8本合わせ、御召ヌキ(=強撚)
シボのアップ↓
また、モノ創りの現場を感じていただけるよう、素材や道具を展示。
森氏の刺繍糸。手前が日ごろ使っている糸。
奥の淡い色目のものが、今回塩野屋でつくった純国産刺繍糸を森氏が草木染したもの。
昔の刺繍糸のように、染色性・発色性もよく、ふんわりやさしいと。
(この糸の製作過程については、森氏のブログ9/10~を是非ご覧下さい!)
桶絞りの道具、絞った見本きれなど。
その密な細かさにびっくり…機械?いや機械では無理、ひたすら手作業です、だそう。
会場ではご来場の方々と作者とのお話も絶えませんでした。
その都度、糸を割って撚りをかけて作品に合う糸を作るんですよと、実演の森氏。
これは、花びらが散っているのでなく、吹き上がっているところをイメージしたもの、
自然と舞い落ちるのと吹き上がるのの構図の違いが出てくる、と寺田氏。
日本の繭の自給率は1%も無いんですよ・・・と、純国産絹の現状を伝える服部。
最後に・・・
会場でブログ用にと毎日マメに写真を取られる森氏。
おつかれさまでした!
投稿者 orihanzo : 20:42
レポート/「純国産絹 京都三人衆 ~可能性への試み~」 1
[塩野屋絹だより]
11月18~20日 蚕糸会館(有楽町)にて、開催された会は、
純国産絹の塩野屋の裂を活かし、京都の技をご覧いただく初コラボレーション展でした。
その三者は・・・
森康次/日本刺繍「森繍」
寺田豊/京絞り「寺田」
服部芳和/本シボ柳条縮緬「織道楽 塩野屋」
平日の3日間という短期間でしたが、お蔭様でたくさんの方にご来場いただけ、
「純国産絹」ということへの関心の高さを感じさせていただけました。
会議室をお借りしての会場は、こんな感じに・・・
受付には、着物美人のお二人
左:佐々木さん(寺田氏のお客様)、右:仲川さん(森先生のお弟子さん)
受付台には今回使われた純国産の繭
また、17日夜にはオープニングパーティが開かれ、一般のお客様、そして蚕糸関係者の方も。
まずは、三名でご挨拶。
左:寺田氏、中央:森氏、右:服部
そして大日本蚕糸会の高木会頭からもご挨拶をいただきました。
パーティーの華は、バイオリニスト・橋口瑞恵さんによる演奏。
小袖をまとい、「絹に想いを込めて」と演奏をしてくださった曲は
『プレリュード』J.S.バッハと、『24のキャプリスより 24番』パガニーニの2曲。
弦楽器であるバイオリン、今は金属糸がほとんどだが、絹製の弦で弾く方もいらっしゃるそうで、
お世話になったイタリアのバイオリン店の方に、絹糸の弦のお話、
昔イタリアの蚕が病気で全滅して日本から蚕を求めた話などを聞いていたとのエピソードも
ご紹介くださいました。
下記は橋口さんのバイオリン。
1740年イタリアジェノバのヨーゼフ・グラツィアーニ作のものを譲り受け、大切に使っているそうです。
時を重ねて使い込まれたもの、美しいですね。
投稿者 orihanzo : 19:41
2008年11月24日
タイコウさんの出汁とり教室に参加してきました!
[塩野屋絹だより]
本物をつくり続ける絶滅危惧衆のお一人、かつお節のタイコウさんが始めた”出汁取り教室”。
今回は、練馬区の自然村という自然食品店さんの主催で行われました。
こちらが、タイコウの稲葉さん。
オススメの土居さんの昆布+会場のみなが削ったかつお節で出汁をとります。
いいかつお節なら、しぼってもいやな味にならないと!
透き通ったお出汁でお吸い物。まろやかでしっかりしたお味◎
それから、市販の削り節を含め4種の出汁の味比べ。
結果は、各製品かなりの差が・・・(笑)
その合間には、素材の話はもちろん、取り方の応用、使い方の応用、
市販の削り節ミニパックなどがいかに割高か!?などのお話、
最後には自前の蕎麦つゆで、美味しいおそばまでいただきました。
詳細は、下記もご覧ください~!
自然村ブログ ← 12月には塩野屋の催事も初企画!お楽しみに。
かつお節のタイコウ ← 今後もあちこちで出汁とり教室始まるそうです。
絶滅危惧衆 ←各社の情報がリンクされています。
投稿者 orihanzo : 18:50
レポート/秋山眞和(宮崎)×服部芳和(京都) ~純国産繭から~
[塩野屋絹だより]
11月4日~9日に”染と織りの店 あきやま”にて行われた二者のコラボ企画展、
「純国産繭からの絹織物展」。
お蔭様で、たくさんのお客様にお出かけいただけました、ありがとうございました!!
会場では、二日にわたりトークショーも開催。
中央左が秋山先生、右側が服部。
ナビゲーターは消費者代表としての立場で、お二人が交代。
一日は、吉田加奈子さん(秋櫻舎スタッフ)。写真中央。
もう一日は、西村はなこさん(シルクラブ・店主)。
写真手前のお着物後姿の方です。お顔写っていなくてすみません。
⇒お召しになられている紺地の絣は随分昔に秋山先生の作品を求めて着続けた思い出の
一枚だそう。今の作風とはまた違って、少しクラシカルな?暖かい雰囲気の紬。とても素敵。
ディスプレイもコラボでした。(いずれも画像が悪くてゴメンナサイ~)
藍染絣着物(秋山製)+縞御召帯(塩野屋製)
無地御召着尺(塩野屋製)+花織袋帯(秋山製)
本藍染無地紬着尺(秋山製)+絣御召帯(塩野屋製)
十五職縞御召着尺(塩野屋製)+矢絣八寸帯(秋山製)
2枚目のトーク会様子の写真の背景にある2枚の市松柄着尺。
アップでみると、こんな違いです。
右側の黄色っぽい絵羽仕立の一枚は、秋山製の花織。
左側のグレーぽ反物状の一枚は、塩野屋製の御召。
ショール各種(左側が秋山製+右側が塩野屋製)
本藍染ニットシャツ(秋山製)+蚕の糞染め織マフラー(塩野屋製)
こちらは、小石丸種の繭たった3粒分の糸で手織りされた幅広の草木染ショール。
2枚を重ねても手は透け透け・・・!軽い~!!!
手織りの極限に挑戦、だそう。ため息モノです。
会場ではこんなものも販売されました。
宮崎産・桑の実ジャム、おいしかった!
染と織の店 あきやまさんは、常設のお店です。
市ヶ谷方面へお出かけの際は、是非お立ち寄りになってみてください。
季節のショールやお洋服、小物なども置かれています。
染と織の店 あきやま
住所:東京都千代田区九段北3-2-3 ダヴィンチ九段ビル1F
TEL:03-3234-3341 FAX:03-3234-3342
営業時間:10:00~18:00 休日:日・祝日
投稿者 orihanzo : 18:05
リクエスト絣、もうすぐ織りあがります。
[塩野屋絹だより]
以前に数色の色違いで織っていた縞+絣、
とても着易いと評判の柄ゆきでした。
数年前には白・黒で再度織り出しましたが、今回はまた久しぶりに紫で復活です!
そのきっかけは、クロワッサン誌。(詳細は、10月27日ブログ)
このページがキッカケで、何人もの方がこの柄のマフラーが欲しいという
リクエストをいただき、もういちど織り出しました。
下記写真は、経糸(=縦糸)(柄は全て経糸で表現されています)が
梯子(はしご)という道具にかかっている状態。どうなっているかわかりますか?
梯子は、絣柄に染められた糸を、設計図に合わせてずらし、
柄を完成させる道具。
つくりたい柄によって、金棒を梯子状に通し、ずらし加減を調節。
その名の通り、段々になっているところが梯子のように見えます。
(製造工程については、こちらもご参照ください ⇒ 和の学校)
まずは、染め上がった糸が梯子にかかった状態。写真下側から上へと糸が送られます。
手前はまだずれていませんので、紫の染め上がりが横一列に並んでいます。
上奥の方が、梯子の金棒を通っているところ。段差がわかりますよね。
つぎは、梯子をくぐってきた状態。柄がずれて、矢絣の形に!!!
柄が完成した縦糸は、手前(写真右下方向)の千切り(ちきり)に巻き取られていき、
機場へと送られます。
以前織った時に着物にしたスタッフ・石井の一枚は、
かなり着込まれて、いまではとろりとなんともいえない風合いに。
いつか、その着姿もご覧くださいね。
いまは、機場で織り上げられている最中です!
織りあがり次第、またご紹介させていただきます。
遅くても年内にはマフラーとして製品も出来上がります。
早いもの順!?
*** 詳細お問合せ、お求めは京都本店まで、お願いいたします。***
投稿者 orihanzo : 16:05
2008年11月03日
クワコの繭
[塩野屋絹だより]
桑園の葉も、あとしばらくで枯れ始めます。
たくさんいたクワコ(野生種。蚕の先祖といわれる)も、
いつのまにやら繭をつくっていました。
ちなみに、これが幼虫のとき。
家蚕の蚕より、頭が大きい感じで可愛く見えます。
まだら模様有り。
大呂の桑園には、普通の桑園よりクワコが多いみたい。
やはり、美味しい葉なのでしょうか。
投稿者 orihanzo : 09:49
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2008年11月02日
レポート/”色留袖”をお誂え。 ~その4・トレサビリティ~
[塩野屋絹だより]
今回のお誂え・色留袖についての、トレサビリティをご紹介させていただきます。
<織元/ 服部芳和・織道楽 塩野屋(京都府京都市)>
蚕種/ 都浅黄(みやこあさぎ) : 大日本蚕糸会
養蚕/ 全齢桑育 : 野村夫妻(京都府福知山市)
製糸/ 生繭で諏訪式座繰り製糸 : 宮坂製糸(長野県)
経糸下撚り撚糸/ 合わせ撚糸 : 西村泰一・西村撚糸(京都府京都市)
精練/半練り : 北川富康・北川半染工場(京都府京都市)
整径/ドラム整径 : 沼田精史・沼田精史整径(京都府京都市)
横糸糊付け/姫糊・甘藷・布海苔 : 渡邉長蔵・渡邉加工所(京都府京都市)
横糸本撚り撚糸/湿式八丁撚糸 : 池田一雄・池田撚糸(京都府京都市)
製織/力織機 杉本成史(京都市与謝郡加悦町)
整理加工/地入れのし : 立石憲一/立石整理加工(京都府京都市)
友禅加工/真糊糸目友禅 : 桒垣・染織工芸 花也(京都府京都市)
仕立/手縫京仕立 : 三原俊夫/三原和裁(京都府京都市)
使い手/宮沢巳起代・織道楽 塩野屋
↑ちょっとわかりにくくてスミマセン。
後ほど、整理してトレサビリティのページに掲載させていただきます。
生地の端には、トレサビリティのメモ有り(笑)。
上記リスト、もっと一箇所ずつ細かく書いたら、まだまだ多くの方の手を経ているもの。
絹織物、特に着物というものがこのように長い生産履歴を持つものなので、
なかなかそれを追うことができにくい業界です。
まして、今までの呉服業界の流通を経ると、メーカー、問屋、仲買、小売、etc・・・
これにさらに長い流通履歴がつきます。
食べ物で騒がれているトレサビリティですが、
大切な思いできる着物も、創り手の顔が見える一枚だとより嬉しいですよね。
(ほとんど判らなくなっている、知ろうともされていないのが現状です。)
最後に、着物の柄についても少々。これは、文箱(ふばこ)の柄取り(枠の形)に、羊歯(しだ)が埋め込まれているもの。
「羊歯」は・・・
古くは「歯朶」と書いて「歯」は「齢」の意もあり、「朶」は「しだれた枝」で「長く伸びるもの」…。
つまり「長寿を願う吉祥」。
お正月の「裏白」も歯朶類で、成長逞しく葉も茎も枯れにくいところから、「長寿」を意味するとか。
また、雪や霜にも弱らないので丈夫であり、葉裏には胞子を沢山増えるので「子孫繁栄」の意もある。
「文箱」は・・・
もともとは、和歌や書の上達を願う意だったそうです。
はじめにこの柄を選んだとき、お恥ずかしながら「羊歯」とは気づかずに、
お願いした後になって、「コレ、何の柄でしょう?」とお尋ねしてしまいました。
「文箱に羊歯ですよ。」と、桒垣さん。
「え?しだ?しだってあの羊歯ですか?」
でも実は、私はもともと羊歯などの自然の理にかなった美しい植物のパターンが大好きでした。
なので、こんな風に羊歯という繰り返しのパタンを遠近、濃淡、陰日向など様々な表現で、
羊歯という一つのモチーフだけの繰り返しだけでも飽きせない奥深さを表現してくださり、
とても嬉しく、本当に気に入ってしまいました。
ということで、この一枚を仕上げてくださった
多くの皆様の手に感謝、想いに感謝。
ありがとうございました。
あと何十年?一生大切に使わせていただきます。
(みやざわ)
・・・・・番外編・帯について へつづく・・・・
投稿者 orihanzo : 11:56
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